妄想を膨らませ、こじつけて
a0008075_0473457.jpg2005/6/12 テアトルタイムズスクエア



「Assassination of Richard Nixon, The」
(「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」)
(2004アメリカ)


監督:ニルス・ミュラー
脚本:ケヴィン・ケネディ 、ニルス・ミュラー
出演:ショーン・ペン 、ナオミ・ワッツ 、ドン・チードル 、ジャック・トンプソン 、マイケル・ウィンコット


なんというか、残念な仕上がりですね。ショーン・ペンの演技は確かに光ってはいましたが、どうにもこの事件への動機付けがあまりに薄っぺらく、ある意味逆恨み的な描かれ方をしていたように思います。まぁ一国の大統領を恨むこと自体、ある程度普通の国で普通に生活している以上逆恨み以外のなにものにもならないとは思うのですが、しかしこの描き方はあまりにひどいなぁと。

描いていること自体は日常的に誰もが少しは抱えているだろう不満であり、ある意味納得できる部分はあります。しかしこれがいきなり大統領暗殺へと結びついてしまうとあまりに滑稽で仕方が無い。所謂ハリウッド的な派手さを中途半端に追った感が否めません。やはりこのような日常的な不満が、このような大それた事件へと発展するためにはそれなりの所謂"狂気"が必要なはずでそれがあまり見えなかったのが話が突拍子も無く、こじ付け的、逆恨み的に見えてしまう原因ではないかと。まぁ何でもかんでも"狂気"のせいにすればそれで良いかといえばそうでは無いですが、「タクシードライバー」あたりはやはりここら辺のつなぎ方が上手かったなぁと思うしだいです。また、最後の決定的な引き金を家族との別離としたところも少し安易ではないかとも。

もしこのような日常的な不満が狂気も無く、大統領暗殺という事件に結びつくというのであれば、それはそれで現代の狂気以外のなにものでもないとは思うのですが、しかしそうであったとしたら、作品中の時代とさほど変わりが無い、あるいはよりひどくなっている、つまりさらに表面化しつつある夫婦の不和、未だに残る人種差別、一時期よりはましになったとは言え、やはりある就業問題、ますます広がりつつある貧富の差、さらにどうしようも無い大統領を抱えている件の国で、同様の事件がおきないことの説明ができないのではないでしょうか。やはりこの作品には何かが足りない、あるいは何かを足しすぎのような気がします。


まぁいずれにしてもこの作品は、現代のほとんどの人間が感じる資本主義の日常に潜む悪と、資本主義の結果としての不平等に、純粋なために人一倍悩む彼を支えてくれる家族がいないことが、このような狂気的な事件を起こした原因として結論し、そしてそういった問題に誰も注目しない現代社会の問題を指摘しています。これはこれでテーマとして聞こえは良いですしありな感じはしますが、繰り返しですが最後に起こした事件がそれまで丁寧に描いていたものとは突拍子も無くかけ離れており、どうにも納得しにくいですね。最後に「事実から発想を得て・・・」と字幕が出ていましたが、もしかしたら大部分がかなり安易な想像だけで、こじつけ的に作られた中身の無い作品なのではという気がしてなりません。ショーン・ペンの演技が良いだけに非常に残念です。
[PR]
by nothing_but_movie | 2005-06-14 00:55 | Movie(A)
<< 正しい家族の崩壊の仕方 印象的、対照的 >>