正しい家族の崩壊の仕方
a0008075_0341266.jpg2005/06/05 シネクイント


「Dead End」(「-less[レス]」)
(2003フランス/アメリカ)


監督・脚本:ジャン=バティスト・アンドレア、ファブリス・カネパ
出演:レイ・ワイズ 、リン・シェイ 、アレクサンドラ・ホールデン 、ミック・ケイン 、ビリー・アッシャー



珍しく気を使ったりするのですが、この作品はオチがわかってしまうと見る気すら起きないくらい古典的な作品で、さらに中盤に若干もたつきもありますが、しかしながらホラーとしては要点をつかんでいて、典型的であるがゆえに見ていて疲れず、また先が読める楽しさというか、あまりにもあえて狙ったとしか言いようの無いべたべたな展開に笑いが漏れ、これまたありがちで使い古されたウィットが作品後半を軽いノリに仕上げており、非常に面白い作品になっていると思いますので未見の方はこの文以降は読まずにぜひ劇場へ。


さて、ナンセンスホラーと一口で言ってしまえばそれまでですが、まぁあれです。ホラーとして見るとかなり控えめなこの作品は比較的万人受けする出来ではないかとも思うのですが、だからこそテレビやなんかでも嫌というほど使い古されたこのてのオチはあえて狙ったとしか言いようがないですね。そんなわけでフザケタ作品ですので必見かと言えばそうでもないような気もしますが、この作品がかもし出すウィットな感覚は非常に好きで、恐らくテレビやなんかでまた見る機会があれば見てしまうだろうなと思っています。


"幸せ"というありもしないものを目指して生きる家族という共同体は崩壊が常である。そんなメッセージが聞こえてきそうなこの作品はある家族の家族史に読み替えると面白い。末っ子はバカでお気楽。薬とマンソンにはまる少し古いかもしれませんが比較的今時で典型的なガキンチョは親の見えないところで、自業自得ともいえる死を迎える。表面的には中むつまじい夫婦も実はお互いに秘密を持っていて、母親は結婚初期に浮気を。それに続くように父親も同様。そんな夫婦は崩壊するのが常。たいていはダメな男から女が逃げる訳です。まぁ女のほうも逃げれば幸せになれるかといえばそうでもないのですが。父親は、"厳格で強い父でありたい"みたいな今時滑稽な思いを持っているようで、最後までその役目を全うするべく意気込みますが、そんなやる気も空回りで、まずはアル中に。これではだめだと違う道を模索するもそんなものはいまさらあるはずも無くもとの道に戻ってくる。最後は白内障になったり、足が不自由になったり散々。良き父親になれなかった男の願いは、少年に退行するか良い爺さんになるくらいしか一般に残っていないのですが、そんな些細な願いもかなわず狂って最後は銃を片手に死地へ赴く。哀れですが憎めない男です。精神科医を目指していて一番まともに見える娘も、子供を身篭っていながら男と別れてシングルマザーになる気満々。一番身勝手でよく分からないキャラなんじゃないかという気もしますが、そんな願いが聞き入れられてか、相手の男はさっさと死んでくれて一件落着。今の世の中は女性がとにかく強い。本気になれば男なんて全くといっていいほど無視して、現実を望みどおりの方向へ変えてしまうといった強さを感じさせます。

といった感じの話しが劇中で展開されるのですが、まぁつまり、別にホラーでなくても実際にありそうなこんな話をホラーにしてしまうこと自体が既にウィット。つまり現実はホラー並みに狂っていて恐ろしいものですよというニュアンスが小気味良い面白さを感じさせます。また、実際には違うようですが、全ての出来事はまともにみえる娘が潜在的に持っていた家族への狂ったイメージとも取れなくも無いところがまた良い。


間違っても名作ではないですし、どう間違ってもイマドキ流行りませんが、つぼを押さえた良い作品で、7、80年代のホラー映画を小ばかにしつつもそれらへの深い愛情を感じさせる作品です。馬鹿馬鹿しくもないがしろに出来ないB級映画として今後何かと話題にしそうです。



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ああ、なるほど。確かに少しこじんまりしてはいますが「マルホランド・ドライブ」ですね。
Buzz++
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by nothing_but_movie | 2005-06-15 00:43 | Movie(D)
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