見えない意図の出所
a0008075_1152195.jpg2005/6/18 シネセゾン渋谷


「One Point O」(「1.0 【ワン・ポイント・オー】」)
(2004アメリカ/ルーマニア/アイスランド)


監督・脚本:ジェフ・レンフロー、マーテン・トーソン
出演:ジェレミー・シスト 、デボラ・カーラ・アンガー 、ウド・キア 、ランス・ヘンリクセン 、ユージン・バード



勘の良い人ならかなり早い段階でナノマシンの目的がわかるのでは無いでしょうかね。私はエレベーターでのあの男の台詞で「なるほど」と関心のあまり深々とと頷いたりして、隣にいた連れに変な目で見られてしまいました。それにしてもこの作品、近年ではずば抜けて独創的な着想ではないでしょうか。ナノテクノロジーは近年話題になりつつありますが、同じように話題になっているバイオテクノロジーよりも目に見えないからかどうかは知りませんがあまり映画のネタには用いられていませんでしたが、この作品は上手くナノテクノロジーを恐怖の対象として描いています。そしてまた、その恐怖の仕掛け人がなんとも絶妙ですね。


知らないうちに、他人の思うままに半強制的に操られる恐怖と、気づいていながら逃れられない恐怖。それをこの作品は上手く描いているわけですが、これは何も近未来の話ではなく今もある話。まぁ真偽は定かではないですが「サブリミナル効果」などが比較的この作品の意図する恐怖と近いのでは。そしてそこまで極端ではないにせよ、ある程度既に現代の人間はこの作品で描かれている状況に近いのではないでしょうか。


序盤の無機質な画では尾行者や不穏な音を入れることで無機質な中に"見えない意図"を描くことに成功しており、作品の方向性を上手く明示するとともに、得体の知れない気持ち悪さを感じさせることに成功しています。色使いや描き方は全く違いますが、ソダーバーグの「ソラリス」に通じるものを感じますね。

何よりもこの作品で面白いのはやはりラブシーンの初めに男女が交わす台詞。お互い愛していないのにラブシーンを演じてしまう彼等の姿はハリウッドのお決まりのパターンにあてつけた皮肉そのもの。この作品のテーマを上手くウィットに転化していて笑いそうになりましたが、周囲はそんな様子も無いので噛殺す破目に。話的には全く重要でないにも関わらず、ほとんど必ずラブシーンが入るというハリウッドの定番パターンから逃れられない彼等は、このストーリーの恐怖の正体とはまた別の"意図"に操られているわけで、しかしそれに気付いてもやめることが出来ない彼等の悲しさと、その抵抗の意思をその"意図"の持ち主、すなわちこの定番を築いてきたハリウッドとそれを容認あるいは歓迎してきた私たちに向けて台詞で示したのですから、これは明らかに笑いを狙ったところですよ。あ、どうでもよいですか。


無理に全てを説明しようとしてその懐を全て明かしてしまう作品よりも、しっかりバックグラウンドを構想しつつもそれら全てを描ききらず、切りっ放しのようにデザイン性を意図した未消化部分を、意図的に潔く残したこの作品は非常に好印象ですね。もっと多くの映画館で公開しても良い作品だとは思いますが、これまた渋谷の1館だけでしかもレイトのみと非常にもったいない感じです。とにかくサスペンスというかスリラーでは久しぶりに手放しで褒めれる作品。想像力を掻き立てるというか、余韻を楽しめるというか、「SAW」を見た後に感じる「だから何?」感が無いのは其れなりの主張というか、問題提起がしっかりあるからでしょうね。この監督の次回作に期待ですね。
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by nothing_but_movie | 2005-06-23 01:35 | Movie(O)
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