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人が人として
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2006/5/21 シネスイッチ銀座

「JOYEUX NOEL」(「戦場のアリア」)
(2005年仏/独/英)

監督:クリスチャン・カリオン
出演:ダイアン・クルーガー 、ベンノ・フユルマン 、ギョーム・カネ 、ゲイリー・ルイス 、ダニー・ブーン


近代の戦争は「ジャーヘッド」にも描かれているように、個を失った戦争。「ジャーヘッド」の台詞を借りるなら「英雄を生まない戦争」これは同時に、人間的な思いも生まない戦争なわけです。そういう意味で、この作品の元となった実話が"第2次大戦"でも"湾岸戦争"でもなく、間違っても先の「イラク戦争」でもないのは言うまでもなく。なぜなら2次大戦ではガスが、湾岸戦争では空爆が"個"を失わせ、イラク戦争では戦争と言う概念そのものが見えなくなってきています。これがどのような影響を及ぼすかと言えば、「信心深い者もそうでない者も冬の焚き火に集まるように、そこに集い、戦争を忘れようとした。
」「しかし、戦争が私たちを忘れない。」という、この作品の悲劇性が凝縮されたこの台詞のような苦悩すら生まないと言うことなのです。それぞれが個として戦争に巻き込まれ、戦場で家族のことを語り、互いに思いやり、局地的には、戦争自体を回避した。

このようなことが、個を失った、相手の見えない戦争では生まれる余地すらないのです。

さて、話は明後日の方向に。「愛より強い旅」でさらりと言い放たれたように"音楽は宗教"である。それが持つ力と、キリスト教そのものが持つ力が合わさった時に欧米諸国の人々が受ける影響は絶大だなと。いろいろな宗派があるにせよ、根源的にはひとつのものを信じる宗教と、音楽と言う言語を超えた力を持つそれが合わされば、それに勝るものなどないわけです。それに比べ、スラブ、アジアに存在する宗教はそもそもが多神教。信じるものが複数あればその結束力は推して知るべし。いくら日本の音楽がアジア諸外国で流行ろうと、多神教ではあまり意味がないでしょうね。まぁ日本の音楽自体がアレですが。そういう事情もあってか最近日本の周りは何かと物騒な話題が多いようで、と、どうでも良い話。

わざわざ"個"が絡んでいることを米軍が"救出作戦"をニュースにして流すくらいですから、今後も戦争から個人の喪失は続くことでしょう。"個"がない戦争は残酷とか悲しいとか憎いとか、そういった感情すら生まない。それこそがもっと危惧することであることは、"人が人として殺しあう"ことと、"物と物が壊しあう"というなんとも陳腐な表現からも明らかに読み取れることでしょう。
by nothing_but_movie | 2006-05-24 01:34 | Movie(J)
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